冷たい魅力

8冊目の『小川洋子

密やかな結晶 (講談社文庫)

密やかな結晶 (講談社文庫)

「沈黙」「完璧」「凍りつく」「寡黙」「密やか」のタイトルから発せられる冷たく冷静な匂い。

それにやられてます、完全に。

今回のお話も記憶をどんどん消滅させられて、ついには自分を失くしてしまいます。それでもお互いギスギスすることなく、みんなで協力しあって生活し、失った物など最初から何もなかったかのように・・・・。

記憶なんてなくても平気な気分にさせられます。

嫌な思い出だけ失くして、楽しい事だけを覚えていられるのがいいのだろうけど、この本にはどっちかしかない。記憶の残せる人は「忘れちゃダメ」記憶の残せない人は「記憶ってそんなに大切?」で交わる事ができない。

私なら消滅していく方を選ぶ。

淡々と進む物語に引き込まれて、またもスピード読破。


*あら、いつの間にか秋の気配・・・・「虫の声」が聞こえてきます。